この胸が痛むのは
「その葉っぱですか、草を燃やして。
 それを持ってお嬢様の周りをまわるんですね?
 何周ですか? 左右どちらに回るんでしょうか?」

何周? 左右どちら?
イロナ部長はそんな話はしていなかった様な気がします。
必要な物は揃えたのだから、そこはどうでもいいと、判断しました。


「何周でもいいわ。右回りと左回りも貴女が好きな方に回って?」

「時計回りは、右ですよね?……右回りにします」


彼女の気が変わらない内にと、私は素早く蝋燭に灯をともし、カーテンを引き。
貝殻のお皿に乗せたセージに火を着けました。
それを銀のトレイに乗せて、燭台と共にロレッタに手渡しました。


「回り終わったら、もう出ていってくれていいわ」

私が受けた催眠術の恐ろしさに比べたら、名前
だけがおどろおどろしい死人還りです。


「やっぱり、どなたか男性を呼んだ方が……
 アーサーさんもジェームズもいます」

最後の抵抗をロレッタは口にしました。
知ってるの、下男のジェームズは、貴女と付き
合っているのよね。
私は無言で彼女にトレイと燭台を渡して、床に 直接座って両手を組み合わせました。


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