この胸が痛むのは
アグネスはプレゼントの御礼を言った俺に
『実際には自分が選んだのではなく、母親と姉が選んだペンだから……』と、しょんぼりしていたが。
それでも、俺の事を考えて、渡そうとしてくれたのは君なんだから。
大切にする、と伝えた。

それに、あのクラリスが選んだわけはない、と
俺は確信している。
母親が選び、面倒くさそうに
『それでいいんじゃない?』と、いい加減に即決したであろう事は間違いない。


侯爵への書状と同時に、またアグネスに先日城に来てくれた御礼のカードと今度はマシュマロを用意する。

このペンは本当に書き心地がよくてペン軸を握ってても手に馴染みやすい。
ちょっと話したことを覚えていてくれて、そこからの、贈り物は気分を高揚させる。

そうだ、侯爵とは夜会の前にクラリスを交えて、打ち合わせをした方がいいな。
だったらアグネスには直接手渡して、笑顔が見たいと思い。
出すつもりだったカードはデスクの引き出しにしまった。
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