この胸が痛むのは
死人還りを試したのかと、尋ねられました。
姉上とは会えたのか、とも。


「駄目……駄目なの、お姉様は来なかった」

頭を振って答えました。
何故なら、頭の声からそうする様に指示されたから。

『怒られない様にしなきゃ』って。


殿下は死人還りだと知っていらっしゃった。
当たり前です、殿下と先生はすごく親しかったのに。
いつの間にか殿下はオルツォ様とも親しくなっていた。
多分、アーグネシュ様とも、リーエとも。
私の知り合いは殿下の友人になり。
父や兄も親しくしてる。
いつの間にか、私の周囲は殿下の為に動く人ばかり。


「これは……一体どういうつもりだ?」 


カーテンを開いて、部屋を明るくさせて。
私の着ているドレスに気付いた殿下が私を責め
ます。


あぁ、今この場で。
あの日から初めて貴方は、私を見てくださって
いる。
姉を喪ってしまったあの日から……初めて。
私自身を貴方は見てくださっている。


そう気付いて、私は気分が高揚しました。
自然と、喜びに我知らず微笑んでさえいたのでしょう。

それを見逃さなかったアシュフォード殿下の声音は、今まで聞いたことがないような低く冷たいものでした。


「アグネス! 何故嗤っている?
 それは私を愚弄している、と受け取っていいのだな?」
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