この胸が痛むのは
直ぐに助けを呼びに行ったオルツォ様と、お祖父様とプレストン伯父様が入れ違いに部屋に入ってこられたのです。
ふたりはフォード様と私を引き離そうとしたのだけれど、私も殿……フォード様もお互いに離れたくなくて。

私は小さい子供みたいにずっと。
『嫌だ嫌だ』と、言い続けたの。
どうしてか?
それはね、フォード様が私から離れる為にバロウズから居なくなると、仰ったからなの。


お母様の頭のなかの声の話をしたでしょう?
あの声がね、『行きたいなら行かせたら?』なんて言ってたけれど、私は絶対に嫌だったの。
だから大きな声で『行かないで!私を離さないで!』って叫んだのです。

これまで貴族の娘として躾られていたから、大声なんて出した事無かったのね。
それでお祖父様も伯父様もフォード様も驚かれて。

だけど直ぐにフォード様が『絶対に離さない!』って負けないくらいの大きな声で言ってくださったので、伯父様が
『聞こえているから、こんな近い距離で叫ばないでください』と、笑い出されたのよ。

< 639 / 722 >

この作品をシェア

pagetop