この胸が痛むのは
それから私も診察を受けたの。
精神的に不安定になっているから、私にはリヨンの海辺の町に有名なその専門の病院があるから、そちらで療養しなさいと言われたのだけれど、
フォード様がアグネスも帝国で療養すればいいと、反対してくださって。

『もう、離れ離れは駄目だ』って仰って、私も
同じ気持ちだったから、お祖父様も諦めて好きにしなさいと。


それから王城から国王陛下のご使者が来て、
フォード様の命に別状がないのなら大事にはしないと、思し召しをいただいて、一緒に帝国に行くのならと、翌日に婚約したの。
そう翌日よ、次の日。
もうお互いに1日だって延ばしたくなかったから。


 ◇◇◇


今日の話はここまでね、と。
お母様が仰ったので。
私の隣でノンナが溜め息をついた。


「うちの親の馴れ初めなんて、閣下と公妃様に
比べたら……
 いえ、比べる事こそ、失礼ですね」

「素直になれなかった私にとって、リーエと
トマシュさんは、ずっと憧れだったのよ」

「……」

「ノンナ、私の事は公妃と呼ばないでね。
 フォード様は公爵だけれど君主ではないから
妃と呼ばれてはいけないと思うの。
 アグネス、それでいいから」

「……畏まりました、アグネス様」


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