この胸が痛むのは
ただ、ミハン叔父上と、同じ……
『王家の赤い瞳』を気にしただけ。
だから、叔父上に会わせてあげると言ったのに。
美少女アグネスには、断られた。


「君、本当に俺自身には興味がないんだね?」

「はい。全く、少しも」


物静かで、儚げな? 言い出したのは誰だ?
歯切れのいい即答だった。

『はっきり言うね』と言えば、
『トルラキア語には不慣れなので』と、すまして言う。
続けて、心に決めたひとがいるのだと言い切った。

それを聞いて、やはり彼女だと都合がいいと思い。
学院内で会うと、声をかけた。
本当に自分に興味はなく、何なら話もしたくない感じだったが、それも面白くて話しかける。


「スローン嬢、あのさ……」

「お花を摘みに行く途中ですので、急いでおりますの」 

食堂で、昼食を乗せたトレイを手にして。
それを言うか?


「奇遇だね、何の本を借りるの?」

「これからお花を摘みに行くので、お話は出来かねます」

珍しく図書室で、貸し出しの行列に並んでいる
美少女を見かけて声をかければ。
えっ、今は順番を待って並んでいるだけだよね?


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