この胸が痛むのは
半年後にリリアンとの結婚も決まっていた。
だが、アシュフォードが3年程、国を離れて
リヨンに赴くと聞いて、レイノルドの心が逸った。
居ても立っても居られない、とはこんな気持ち
を言うのだと、実感した。


「……春に結婚だろ? 新妻を3年も置いておけ
ないだろう」

アシュフォードからは結婚を理由に、同行する事に難色を示された。


「お前の結婚式に出られないのが心苦しくて、
申し訳ないと……」

「俺は役に立つよ! お前さえ呼んでくれたら、リリアンに延期を頼む。
 もしリリアンが駄目だと言うなら……」

置いていかれてはたまらないと、レイノルドは
懸命に言い募った。
第3王子のアシュフォード、侍従のカラン、
そして乳兄弟のレイノルドは3人組だと。
そう思っていたのは俺だけか?


「お前さ、駄目と言われるに決まっているだろ! 結婚は一生の大事だ。
 血迷うなよ?」


王太子が正式にバロウズ国王に即位するのが来年の夏。
即位式にアシュフォードは一旦帰国するだろうから、俺も結婚式を挙げて。
再びリヨンに戻る時にリリアンを連れて行けば。
そうすればいいんじゃないか。

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