この胸が痛むのは
レイノルドは頭の中で計画を立てる。
婚約者の都合も気持ちも、その中には入って
いない。
貴方を支えると、言ってくれたリリアンだ。
反対などしない筈。


「レイ、お前がどんなつもりかわからないが、
結婚して妻になったロイズナー嬢をリヨンに
連れていくのは賛成出来ない。
 内戦が終わっているからと言っても、王太子派の残党がリヨン王宮にまだ残っているんだ。
 俺達にとって、家族は弱味になる」


アシュフォードの言いたい事は充分理解出来る。
しかし、俺の気持ちもわかってくれ、と
レイノルドは縋った。


……お前もカランも……彼女も居ないこの国で。
……この俺は?


思い出してはいけない面影が、レイノルドの心の中を横切って行った。
その残像を振り払う為に、わざと明るい声を出した。


「使節団と居残りメンバーの決定はまだだな?
 リリアンと話し合うから、俺の席は絶対に
残しててくれよ?」



リリアンに、手短に事情を話した。
泣かれて、詰られて、頬を叩かれて。
それでも、行きたいのだと言えば。

諦めたような顔で、リリアンは頷いた。


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