この胸が痛むのは
過分な力は、王家からの不信を招く。
財務大臣として、自ら求めてはどことも繋がらず、どこにも気を遣わず。
それを第一としているから、王家の信頼も厚い。


だからこそ、こぞって皆が婚姻で繋がりを持ち
たがった。
長女で年頃の彼女にも縁談は数多く持ち込まれているのに、丁寧にそれは突き返されていた。

それならば本人を口説こうとしても、デビュー
したのに、彼女は夜会には現れない。
直接自分とは繋がりのない家門が催す、昼間の
茶会にも参加しない。
学園の友人からの誘いにだけ、出席の返事を返す。
侯爵家の親族に紹介を頼んでも、面会にまで
繋がらない。


皆は知らないからだ。
実体を知らないから、想像だけが先行している。
自分達だけは知っている。
本当の彼女、クラリス・スローンがどんな令嬢
なのか。

深窓の令嬢。
なかなか会えない美少女。
成績優秀な才女。


だが、本当は……
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