この胸が痛むのは
うん、これは皮肉だな。
俺は今、王家の臣下から皮肉を言われている。


「いやいや、侯爵も知っているだろうけど、私は王籍を離れる身だよ?
 そんな堅苦しい教育なんて受けなくても良いし何かあればマーシャル夫妻が全力で守ってくれるし」


目の前の侯爵の表情がどんどん歪んでくる。


何が、何で?
安心させようと言葉を探すが、ドツボにはまるとはこの事か?


「……本気で、そうお思いですか?
 もしそうであるなら、私は絶対に殿下には娘を預けることは出来ません」

スローン侯爵が苦々しく言うが、何を言っているのか。
わかるように教えて欲しい。


「マーシャル伯爵夫妻に何の力があるというのです?」

「……」

「アライア夫人は殿下の元乳母で、現在は殿下
専用の女官でしかない。
 グレゴリーはその夫と言うだけ。
 このふたりがまだ幼いアグネスを守る?
 あの王城で? 外よりも内の方が敵は多いのですよ?
 それを私に信じて、預けろと?」


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