この胸が痛むのは
「……別に引き取って、までは思っていない。
 このまま侯爵家から王城に遊びに来る感覚で。
 大丈夫だ、アライアはアグネスをきっと守る」

「そもそも、自分は何も動かず、アグネスの為にクラリスを使えなどと、言い出したのは夫人なのでしょう?」

「……」

「全ては殿下の為、それだけしかないあのふたりは殿下を守る為であれば、アグネスにしろ、
クラリスにしろ、簡単に切り捨てるでしょう。
 クラリスとて、まだ16なのですよ?
 そんな小娘を殿下の盾にしようとしているのに、お気付きではないと?」


あの時、アライアは
『あの王女殿下からアグネス嬢を護る防波堤に
なっていただく』と、言ったのだ。
だから、俺は成程と思ったし……

いや、違う、確かに俺の盾だ。
俺の代わりに追い払って貰おう、とも言っていたのだ。
アライアに任せるのが不安なら、そうだ、これなら。


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