この胸が痛むのは
これが、若き国王陛下が標榜する『新しいバロウズ』か。

この場所から、母と共に落ちるわけにはいかない。


 ◇◇◇


そして、新年大夜会当日。
陛下の目論み通りに、早々に酒に酔った辺境伯
夫人は侯爵令嬢に絡みに行き、王弟殿下に暴言
を吐いた。
王弟殿下は怒りのあまり、侯爵令嬢への接触を
許した側近の不可思議な行為を見逃していた。


それよりも彼は、傷付けられたアグネスの気分
高揚に腐心していた。
アシュフォードとアグネスが早い時間からあの場に居るので、他の者達は遠慮してテラスには行こうとしていなかったが、当人達はそれさえも気付いていないだろう。


近衛に連れていかれた辺境伯夫人の後ろ姿を見ていたレイノルドに声をかけてきたのは。
元妻のリリアンだった。
 

「マーシャル様は相変わらず、ですのね」と。



元妻のリリアンも相変わらず、着ているドレスのデザインは控え目なのに、何故か派手に見えて
美しい。


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