この胸が痛むのは
「私、年上の男性の方が相性がいいのだと、知ることが出来ましたの」


多分、今夜はリリアンと顔を合わすだろうと、
覚悟はしていた。
どうなじられようとも我慢しないといけない、と。


「とても素敵で、お優しくて、何より側に居て
くださって」

「……そう、ですか。
 それは、その、何より……」


何か言わなくてはと思った。
御祝い的な何かを。
これからも貴女の幸せを祈っています、とか。
あの頃はお互いに若くて、私も余裕がなくて、とか。
とにかく、何かしら良い言葉を。


「あれはあれで、良い思い出なんて、仰らないでくださいませ。
 私にとっては嫌な、忘れたい思い出なんですもの」


リリアン・ロイズナーは派手な見た目で誤解を
受けやすいが、本人はとても真面目で、優しい
女性だった。
そんな彼女が、ここまで言うとは。
そんな彼女に、ここまで言わせたとは。


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