この胸が痛むのは
未だにミハンが誰かと繋がることを、恐れていることに。
誰かから何かの感情を、個人的にむけられるのを恐れていることに。

そしてミハンは曖昧な態度のまま、離れていこうとして。
友人達はそれを見送るしかなかった。



誰だ、時が経てば解決すると言った奴は?
ミハンは何年経っても、回復していない。

当時、ミハンはアドリアナの家族から口々に罵られた。


『娘の人生を踏みにじりやがって!』

『妹は、お前のせいで死んだんだ!』


どっちがだ、ミハンの人生は踏みにじられて、
彼の心は死んだも同然だ。


ミハンに片想いして、しつこく付きまとい、
トルラキアにまで追いかけたのに相手にされずに、勝手に死んだアドリアナ・バウアー。

彼女の脳内では、ミハンは自分に運命を囁いて
夢中にさせて、純潔を奪って、飽きたと棄てた
男になっていて。

だが、真実の愛に気付いたミハンは再び彼女を
求めてきて。
親が決めた男性と婚約していたアドリアナは、
婚約者と運命で結ばれた恋人ミハンとのどちらも選べないから、死を選ぶと遺書にそれをしたためたのだ。
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