この胸が痛むのは
『ずっと隠れていたら、気分が悪くて眩暈がしてしまったので』
今までの人生で眩暈なんてしたことないけれど、これは良いわね。
なんか、たよやかで、お淑やかで、これぞ貴族令嬢に、ぴったりな感じだわ!

……でも、こんな誰もいない庭園の片隅で、眩暈を起こしたらどうやって人を呼んだのか、
自分で帰宅の段取りが出来るくらいなら、お茶会に戻れただろう、と言われてしま……


「私が助けたことにしましょうか、レディ?」

「えっ!」

背後からいきなり声をかけられて、文字通り私は飛び上がりました。

本気で隠れる気の無かった私は、庭園の四阿のベンチに腰掛けて居ました。
四阿の中は無人でしたので、誰も私の独り言など聞いていないと思い付くまま、述べていた次第です。
自分以外に誰もいないと思い込んで、むしゃくしゃしていた私は考えていた事を全て口に出していたのです。


「今までの人生で、とおっしゃられていたようですが、レディの人生は今年で何年目ですか?」

私が腰掛けたベンチの裏側、四阿の外側にその方は立っていました。
金髪に紫の瞳の美しい容姿をした背の高い方でした。

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