この胸が痛むのは
「どうして、そんな仰々しい……
 普通にお話を聞かせて貰うだけではいけないの?」

ミハンはバロウズの王弟殿下の為に、同じくバロウズの侯爵令嬢の本心を聞き出すと決めて、親友の妻にお願いしようと尋ねてきていた。


「ミハンにしては珍しいね?
 そういうのに首を突っ込むのは、嫌がるタイプだと思っていたよ」


妻の隣でイェニィ・ルカス伯爵がミハンに尋ねたが、最初から返事を期待していないように見えたし、実際にミハンは返事をしなかった。
ミハンとルカスは同い年で、生まれた時からの付き合いなので、返事がなくてもルカスは平気だ。


「……どう言えばいいかな、先入観を持って欲しくないからあまり話せないが、ご令嬢は少し難しくてね。
 そんな難しい思春期の、15の女の子が素面で、君に悩み相談をする?」

「確かに、本心を聞き出そうとしたら、とても
時間はかかります。
 初対面の当日に聞き出すのは、まず無理です。
 とても長く時間をかけて信頼関係を築いてからでないと、そういう子供は心を開いてくれませんから」

「でも、きっと本人は打ち明けたい筈なんだ。
 だから、打ち明けやすいように、催眠術をかけてあげるということ」


< 717 / 722 >

この作品をシェア

pagetop