この胸が痛むのは
「ふたつお願いがある」

侯爵家の馬車で母親の侯爵夫人と共に現れた
クラリスの腕を取り、両陛下が待つ控えの間まで早足で歩きながら、クラリスにお願いした。


「ま、ふたつも? 何でしょう?」

「ひとつめは、王妃陛下から俺との関係を問われても、最後まで友人だと通すこと」

「無論ですわ」

「ふたつめは、『これは真実ではありません』
みたいなぶっちゃけや、アグネスの話を持ち出すのは君からはやめてくれ」

「……ふたつめにみっつめが含まれておりましたね」

「……」

「みっつのお願いは、童話では定番ですから。
 畏まりました、とにかく私は何も申し上げません」

「……」


本当にもう勘弁してくれだった。
『学園で初等部から一緒だったけど、最近すごく気が合うようになった』設定に沿って、ふたりで言い張ったのに。
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