この胸が痛むのは
立ち上がった国王陛下が、両脇を侍女達に支えられたフォンティーヌ王女に近付き、王妃陛下が
微笑みながら、何かを彼女に話していて……
到着した日の一度きりの謁見で両陛下は隣国の
王女と親しくなっていたようだが、それは知らなかった。
こんな重要な情報が回ってこないところが、
スローン侯爵から
『マーシャルには力がない』と、言われる所以
なのかも。


「挨拶に行くか」

隣に立っていたクラリスが頷いたので、レイに
軽く手を振った。 
クラリスをエスコートして、そちらへと進む。
これからが本番だと改めて気合いを入れる。

兄のギルバートは俺と同じくリヨン王国で、王女と会っているので普通に王子スマイルを浮かべているが、その腕にぶら下がるように立っている
婚約者のイザベラ嬢は、圧倒されたようにフォンティーヌ王女を見つめていた。

相手は友好国の王女殿下なのだから、規格外の
大きさに驚いても、口を開けたまま見つめるのはやめて欲しい。
クラリスがそんな対応を見せるなら、注意をしないと。
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