この胸が痛むのは
「リヨンの王宮の外に出るのは久方ぶりなのです。
 素敵な夜をありがとうございます」

噂より低姿勢なフォンティーヌ王女を囲みながら、王家オールスターズ(チビふたり抜き、クラリス追加) で会話をする。 
その形にクジラの追い込み漁が頭に浮かび、可笑しくなって自分でも性格悪いなと思う。

しばらくその場で話していたが、王女の両腕、腰の3点を支える侍女達の限界が近そうで、王女用に用意した特大ソファーまで、王太子がエスコートを申し出た。

王太子に連れられ、ゆっくりと移動していくフォンティーヌ王女の一行を見送りながら、クラリスが呟いた。


「……王女殿下は用意に手間取った、と仰っていましたが……泣いていらしたのではないでしょうか?」
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