この胸が痛むのは

第19話 アシュフォードside

「泣いていた?」

「瞼が少々と……鼻先も少し赤く感じました。
 来るのが遅れたのは、腫れた瞼を冷やしておいでだったのかしら、と」

クジラが夜会に遅れてきたのは、泣いていたから?


「私がそう感じただけですわ。
 決して、王女殿下ご本人に確認などしないでくださいね?」

「あ、当たり前だろう!」

家族や友人でもない、隣国の王女に
『どうして泣かれていたのですか?』なんて聞くような男と思われているのか?
俺は甘やかされてきた男だけど、一応デリカシーは持ってるぞ!

俺の憤りなど知らん顔して、クラリスの目は特大ソファーに腰掛けながら、王太子妃と歓談しているフォンティーヌ王女を見つめている。
今は何も口にしていないようだが、専属給餌士との肩書きの3名は、クジラの餌集めに動いているのだろうか。


「クジラ、どうだった?」

レイが近付いてきて、俺達ふたりに声をかけてきた。


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