エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
結婚して四ヶ月が経った。今年も残すところあと一ヶ月となり、晴れた日でも風の冷たさが首を竦ませる季節。
大和の都合がつけば仕事終わりにホテルの最寄駅で待ち合わせて帰るのもお決まりとなり、今日もいつもの地下鉄出口の階段前で彼を待っていた。
今日は夕方からかなり冷え込むと朝の天気予報で言っていたため、大判のストールを巻き、手袋もはめてきたので、寒さ対策はバッチリだ。
「早く着きすぎちゃった」
早番の日は午後五時過ぎに退勤し、更衣室で梓や同僚とおしゃべりを楽しんでから待ち合わせ場所に向かっているので、大体六時頃に大和と落ち合うのが常となっている。
今日は梓が夜勤で不在だったのと、新婚生活を根掘り葉掘り聞かれ居心地が悪かったのもあって、早めにホテルを出てきた。
『いつの間に⁉ 彼氏いたなんて聞いてないよ』
『旦那さん、どんな人? プロポーズの言葉は?』
『二十五歳で結婚って早くない?』
以前から頻繁に誘われていた合コンへの断りを入れるのに、既婚者であることを周囲に明かしたら、更衣室前の廊下まで響いたであろう大声で驚かれた。
瑠衣が在籍する宿泊部フロント課の同僚は、男女の比率はおおよそ半々。先輩も後輩も気のいい人ばかりで、とても働きやすい環境だ。