エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません

瑠衣は旧姓のまま働いているので、ネームプレートは〝KISARAGI〟のまま。一度話したフロントマンが彼の妻だと気付くことはない。

(大和さんには聞けなかったけど、やっぱり井口様が会いに行ったのは彼なんだ。それで、なにか言われて悩んでるとか……)

彼女は〝仕事しか頭にない堅物のヤマト〟という人物を忘れられず、如月法律事務所を訪ね、瑠衣が紹介した店へ誘っていい雰囲気に持ち込みたいと話していた。

沙良の口ぶりからも、その人物に対して好意を寄せているのは明らかだ。きっと大和がカリフォルニアに留学していた頃の知り合いなのだろう。

(もしかしたら、知り合い以上の関係だって可能性もあり得るけど……それは結婚前の話だし、気にしたってしょうがないよね)

あの日の瑠衣は、彼女の言う〝ヤマト〟が彼だろうと確信しつつ、祈るように大和の帰宅を待っていた。

もしも【夕食はいらない】と彼からメッセージが入ったらと思うと、スマホを見るのすら怖かった。

結局、大和はいつもと変わらない帰宅時間で食事もまだだと言っていたし、帰って早々意地悪に、しかし情熱的に瑠衣を抱いた。

それに瑠衣の記憶違いでなければ、大和は何度も『好きだ』と言ってくれた。

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