エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
これまでも『可愛い』と言われることはあったけれど、きちんと気持ちを言葉にして『好きだ』と言われたのは、あの日が初めてだ。
たとえベッドの中の睦言だとしても、大和の中で昔なじみの恩師の娘という存在から、女性として好意を寄せてもらえる存在になれている証拠だ。
もしかしたら沙良の言っていた〝ヤマト〟は、夫ではないかもしれない。
安心したいがゆえに都合よくそう結論付け、大和から与えられるぬくもりに溺れて見たくないものから目を逸らす。
その反面で、もっと愛されるようメイクをいつも以上に丁寧に施したり、肌の手入れに力を入れたり、下着を新調するなど、思いつく限りの努力をした。
しかし、ここにきて再び不安に襲われる。
大和はぎこちない空気の中、夕食を終えて風呂に入ると、調べ物が残っていると言って仕事部屋へ籠もってしまった。
明日、瑠衣のシフトは早番ではなく中番。いつもなら一緒に寝室へ行き、甘い夜を過ごしているはずなのに。
(やっぱり井口様となにかあったのかな。浮気を疑ってるわけじゃないけど、明らかにいつもと様子が違う……。でも会ったのは一昨日のはず。どうしたんだろう?)
食事には行かなかったにしろ、事務所に訪ねていったのだから話はしただろう。
告白されたのかもしれないし、彼女も弁護士ならば一緒にアメリカに戻ろうと誘われたのかもしれない。
大和に聞こうにも、彼が部屋から出てくる気配はない。