エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
よく小動物っぽいと評される顔立ちは、笑顔になるとえくぼができ、一層幼く見える。
童顔であると自覚はあるが故に、一時期は無理して大人っぽいヘアメイクやファッションを試してみたが、どれも友人から不評の嵐だったため、今は諦めて清潔感のある控えめなメイクと、オレンジブラウンのセミロングという無難なチョイスに落ち着いた。
そんな自分が、大和と釣り合うわけがない。
瑠衣は公園の噴水広場の前で足を止め、大和に声を掛けた。
「父の言ったことは気にしないでください」
きっと大和からは断るきっかけをつくるのは難しいだろうと思い、先回りして自ら口火を切った。
「きっとなにも聞かされずに今日うちにいらしたんですよね? すみません、父が突拍子もない事を」
そう言いながら、瑠衣は父の話を思い返していた。
(お父さん、やっぱり事務所は自分の子供や孫に託したいって考えてたんだ……)
瑠衣と大和の間にできた子供が事務所を繋いでいってくれたら嬉しいという英利の希望をはじめて直接聞いて、瑠衣は複雑な気持ちになった。
祖父の代から続く弁護士事務所は英利の手腕でかなり大きくなり、誰もがひとり娘である瑠衣が弁護士になって事務所を継ぐだろうと考えていた。