エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
「そっか、結婚したんだ」
驚きと落胆の色を隠しきれない声を聞き、申し訳なく思いながら、瑠衣は電話の向こうにいる佐藤に告げた。
「うん。突然の話だったから、まだ周りにもあまり報告できてなくて」
言い訳じみて聞こえるが、実際周囲に結婚の報告を進んでしていない。
突然降って湧いた話だったのはもちろん、やはり恋愛結婚ではないという特殊な事情が口を固くさせていた。入籍のみで結婚式を挙げていないのも、それが理由だった。
佐藤と偶然街中で再会し、復縁を持ちかけられた二日後。
本来ならすぐにでも断るべきだが、昨日は中番で午後一時から十時までの勤務で、午前中に電話を掛けたが生憎繋がらなかった。
その日のうちに折り返しが来ていたものの、気付いたのは帰宅した夜の十一時。さすがにその時間に電話をするのは憚られ、休日の今日、ようやく話すことができている。
「気持ちは嬉しかったけど、私は……主人が好きだから」
今日一日、ずっと考えていた。もしも事務所を継ぐというしがらみのなくなった大和がアメリカへ拠点を移すと決断したら、自分はどうしたいのか。