エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
愛のない懐妊契約婚だったとか、自分が継げなかった事務所や両親への思いとか、色んなことを抜きにして考えれば、答えはシンプルにひとつ。
(私は、大和さんが好き。そばにいたい)
大和が許してくれるのなら妻として海外についていきたいし、離婚することになってしまったとしても、この気持ちが消えるとは到底思えない。
もちろん父と事務所の今後については話し合わないといけないとは思うけれど、大和以外の人とは結婚したくないと心が頑なに叫んでいる。
学生時代に経験した恋愛とは違う、強い想いが瑠衣の心に根付いていた。
「だから、孝弘とやり直すことはできない。ごめんなさい」
電話越しで孝弘が大きく息を吐く。それを聞きながら、瑠衣はぎゅっと目を閉じた。
学生時代、恋人関係を解消する時だって、ここまで胸は痛まなかった。
今こうしてキリキリと胸が痛むのは、きっと瑠衣が大和と結婚し、ようやく本当の恋を知ったから。
「わかった。ごめんな、なんの確認もしないで一方的にやり直さないかなんて提案して。瑠衣に相手がいないわけないもんな」
「ううん。こっちこそ、すぐに結婚してるって言えなくてごめんなさい。まさか、そんなこと言われるなんて思わなくて、ビックリして」
「俺さ、今ちょっと会社がバタバタしてて。久しぶりに瑠衣に会ったら、つい癒やしを求めるみたいにお前に縋ったりして……カッコ悪いな。忘れて」