エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
しかし、瑠衣は家族で旅行した際に泊まったホテルの細やかな気遣い溢れるもてなしに感動し、将来はホテルマンになりたいと幼いながらに夢を持つようになる。
英利はそれを一度として反対せず、両親揃って瑠衣の夢を応援してくれた。
今更ながらに英利の事務所の後継に対する思いを聞き、自分へ弁護士になるよう強要しなかった父の優しさに感謝する気持ちと、期待を裏切ってしまったのではないかという罪悪感がせめぎ合う。
「お父さん、本当は私に弁護士になってほしかったのかな」
ぽつりと零してしまった小さな呟きは、人気のない夜の公園では思いの外大きく聞こえた。
先を歩いていた大和が振り返り、じっとこちらを見つめている。
「あっ、すみません。なんでもないです」
居たたまれなくなり、慌てて首を振った。そんなことを言ったところで、なにか解決するわけではない。
瑠衣が発言を後悔していると、大和が長い脚で二歩踏み出し、こちらに歩み寄ってきた。
「そういうことではないと思う。所長は大事な娘である君が好きな道を選んだのに満足しているはずだ」
瑠衣は驚きに目を瞠る。
まさかそんなふうに言ってもらえるとは思っていなかった。