エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
「……そうでしょうか」
「ああ。ただ事務所の今後を考えた時に、自分が父親から受け継いだバトンを、次の世代に託したいと思ったんだろう。自然な考え方だし、だからといって瑠衣が自分の選択を後悔する必要もない」
きっぱりと言い切る大和の言葉に、少し心が軽くなったのがわかる。
「ありがとうございます」
瑠衣が小さく微笑んでお礼を言うと、大和も目を細めて頷いてくれた。
久しぶりに見たその穏やかな笑顔に、ドキンと鼓動が跳ねる。
「あ、それで、本題なんですけど」
たどたどしくなりそうな自分を心のなかで叱責し、改めて表情を引き締める。
父の考え方がわかったからといって、大和を巻き込むわけにはいかないのだ。
「父には私から話します。きっと高城さんからは言いづらいですよね。なので、本当に今日のことは――」
「結婚しよう」
「……え?」
たっぷり五秒は待って聞き返す。
「瑠衣、俺と結婚しよう」
聞こえなかったと勘違いしたのか、もう一度同じ言葉を繰り返され、瑠衣はパニックになる。