エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
「高城さん、なに言って……え? 本気ですか?」
「もちろんだ。先生には大きな恩がある。俺を選んでくれたのなら、彼の望みを叶えたい」
今日は一体何度驚けばいいのだろう。大きな黒い瞳が転がり落ちんばかりに目を見開き、ハッと我に返って髪が乱れるのも気にせずにぶんぶんと首を振った。
瑠衣は脳内がこんがらがりそうになりながらも、必死に大和の説得にかかる。
「いやいやいや、待ってください。いくら恩があるからって、結婚ですよ?」
「そう慌てなくてもわかってるよ」
大和は瑠衣の様子にクスッと笑みを零すが、笑い事ではない。
「わかってないですよ。だってこの結婚は、事務所の跡継ぎを……」
続きを言葉にできずに口籠る。
(跡継ぎのための結婚。いくら大きな法律事務所が手に入るからって、好きでもない私と子供をつくらないといけないのに)
子供をつくるとは、身体を重ねるということ。果たして恩義のためだけに、そんな結婚を決めていいのだろうか。
「うん。先生がこの結婚に対して、きっと俺の次にあとを継ぐ存在を求めているのもわかってる。だからこそ、瑠衣がいいと思ったんだ」
「それは、どういう……」
大和の言いたいことがわからず、瑠衣は首を傾げた。