エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません

(久保のやつが余計な話までするから……)

宿泊先にアナスタシアを選んだのは偶然だろうが、大和が結婚したと知り、さらに相手が所長の娘だと聞いたせいで、選ばれたのがどんな女性なのか気になったのだろう。

大和が帰ったあとでさらに聞き込み、アナスタシアで働いていることや、所内では政略結婚だと噂されているのを知ったのかもしれない。

「ごめん。嫌な気持ちにさせたよな」
「びっくりはしましたけど、今の大和さんは私を大切に思ってくれてるって信じてるので大丈夫です」

気を遣わせないようにと言ってくれているのだろうが、彼女の頭の中と真実に大きく齟齬が生じている気がする。

「信じてくれるのは嬉しいけど、誤解されたくないからハッキリ否定しておく。井口とはなにもない」
「……え?」

瑠衣の表情を見るに、過去の恋人だと思われているのは明白だった。

そう捉えるよう、沙良が言葉巧みに話したのだろう。

プライドの高い彼女のことだ。自分に靡かなかった男がいるのを認めたくなかったのかもしれない。

「確かにカリフォルニアの弁護士事務所で一緒に働いていたし、異性として好意を持たれているのもわかってた。でも付き合ってはいないし、もちろん男女の関係も一切なかった」
「そう、なんですか?」

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