エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません

法曹界では名の知れた弁護士である英利は、瑠衣にとっては奇抜なことを言い出す人にしか思えず、頭を抱えた。

「お父さん……相変わらずなんて突拍子もない……」
「ははは、俺も最初はそう思った。でも時間は有限で、知識は武器になると講義で熱く語っていた先生を見て、弁護士という職業に興味が湧いた。それで法学部に進学して、先生の言う通り大学在学中に試験を突破して事務所のインターンに応募したんだ」
「学生向けのプログラムもあるのに、予備試験合格者向けのインターンに応募して、さらに司法試験もパスしてたって、父はもちろん事務所内でもかなり驚かれたそうですね」
「生意気だったなって思うけど、先生に自分は変わったんだって伝えたかったからね。それからは瑠衣も知ってる通り。先生にも俺の家庭の話はしてたせいか、よく今日みたいに家に誘ってくれて、君達家族と一緒に夕食をご馳走になったり、仕事について話を聞くようになった。はじめてだったんだ、食卓で家族揃って夕食を食べたのが」

なんと言っていいのかわからず、瑠衣は大和の表情を見逃さぬよう、じっと彼の横顔を見続けた。

「手作りの温かい料理を家族みんなで囲んで、他愛ない会話をしながら食べる。きっと瑠衣達にとってはありふれた家族の団欒だろうけど、俺にはすごくキラキラして見えた」
「嬉しいです。そう言ってもらえて」
「結婚に興味も希望も持てなかったけど、今日先生から話を聞いて思ったんだ。俺の理想の家庭で育った瑠衣とだったら、幸せな家族になれるんじゃないかって」

そこで言葉を止めた大和が、ふとこちらに向き直る。

視線が絡み合い、鼓動が徐々に速さを増していく。

< 17 / 200 >

この作品をシェア

pagetop