エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
土曜日の昼過ぎ、瑠衣はアナスタシアのラウンジにいた。
高級感溢れるラグジュアリーな空間は、自分の職場とはいえ私服だと場違いな気がしてしまう。
結婚式の参列者の集まりや、お見合いと思わしき振り袖姿の女性を連れた家族など、多くの人で溢れ、どこか非日常的な空気が漂っている。
瑠衣は以前来た時と同じ席に座り、同じ人物と向かい合っていた。
違うのは、呼び出されたのではなく呼び出したのだということ。そして、隣に大和がいるということ。
「珍しくあなたから誘ってくれたと思ったら。夫婦同伴なんて聞いてないわ」
運ばれてきたコーヒーに一瞥もくれず、沙良は不満げな声を出した。
沙良にきっぱりと引導を渡すと決めた大和は、電話やメッセージではなく対面で話すため、彼女をホテルのラウンジへ呼び出した。
てっきり彼と沙良のふたりで話すものだと思っていたが、瑠衣もその場に立ち会うように言われたのは今朝のこと。
数日前、互いの本音を全て打ち明け、夫婦間にあったわだかまりがすべてなくなった。
ほとんど瑠衣がひとりで考えすぎていただけだったが、最近の大和のよそよそしい態度の原因が孝弘に対する嫉妬だったとわかり、さらに沙良との関係も誤解だと知った。