エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません

「ごめんなさい。こんなに調べてもらったのに、行けないかもしれません」
「行けない? どうして? 休みが取れそうにない?」
「そうじゃなくて」

瑠衣は隣で怪訝な表情をしている彼の手を取り、そっと自分のお腹へ添えた。

「もしかしたら、ここに、いるかもしれないんです。私たちの赤ちゃんが」

ドキドキして、伝える声が震える。

大和が驚きに目を見開いたが、瑠衣自身もまだ信じられない気持ちでいっぱいだった。

すべての誤解や勘違いが解けた年末、ピルの服用をやめようとした瑠衣に、大和が続けて飲むのはどうかと提案した。

必死に英語を勉強し、ホテルマンとして頑張っている瑠衣を尊重してくれたのと、思っていた以上にPMSが改善されて快適だと話したのを覚えていたのだろう。

『次の結婚記念日までは、ふたりだけの新婚生活を楽しむのはどうかな』

優しい思いやりが嬉しくて、彼の提案に頷いた。

父を心配させてはいけないと、正月にふたりで瑠衣の実家に挨拶に行った際、子供はもう少し先にしようと考えていると話したが、あっさりと受け入れられ拍子抜けし、いかに自分が英利の言葉を重く考えていたのかと苦笑した。

〝懐妊契約婚〟などと思っていたのは、瑠衣だけだったのだ。

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