エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
そして先月、一年近く診てくれた六十代の女性の先生から息子に代替わりするのをきっかけに、ピルの服用をやめた。
妊娠を希望してやめるならシートを飲み切るタイミングがいいと先生から助言をもらった時にちょうど残り二錠だったため、予定よりひと月ほど早くはあったが中止の決断をしたのだ。
飲むのをやめて一ヶ月半。妊娠初期症状としてよく聞く体調不良を感じ、半信半疑で検査薬で調べてみたところ、小窓にくっきりと二本の線が浮かび上がったのを確認したのが今日。彼が帰宅する三十分前のことだ。
大和を愛する気持ちが日々高まり、そろそろ彼との子供が欲しいと思い始めたタイミングでの妊娠の可能性に、身体中に喜びが走った。
「本当に? 病院へは?」
「まだ検査薬で試しただけなんですけど……えっと、喜んでくれますか?」
「もちろんだ! ごめん、まさか薬をやめてこんなに早く子供ができるとは思っていなくて驚いた。でも嬉しい。本当に嬉しいよ」
「よかった」
ホッとして胸を押さえると、大和は瑠衣の頬に垂れた髪を耳にかけ、顔色を確認するように覗き込んだ。
「体調は? 早めに病院に行こう。いつもの病院がいい?」
「いえ。通っていた病院の先生が引退されて、息子さんが院長になったんです。できれば女性の先生のいる病院がよくて、これから探そうと」
婦人科の診察台に乗るのは何度経験しても慣れず、相手は医師だとわかってはいても、できれば少しでもリラックスできるよう女医を希望している。