エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
その後、家まで送り届けてくれた大和とは玄関で別れ、父には瑠衣ひとりで結婚の承諾を報告した。
恋愛結婚でもないのに、ふたり揃って報告するのは気まずいような気恥ずかしいような、なんとも耐え難い気がしたのだ。
大和は少し不服そうな顔をしていたけれど、週明けに事務所で自分からも報告しておくと言っていた。
詳しいことはまだなにも決めていないけれど、大和と結婚しようと思っていると話すと、英利は驚きながらもとても喜んでくれて、それを見た依子もまた嬉しそうだ。
「珍しいわね。英利さんがここまで浮かれるの」
「そりゃあ、娘の幸せと事務所の安泰が一挙に決まれば、嬉しいに決まっているじゃないか」
「瑠衣は? 急な話だったけど、高城さんとゆっくりお話できたの?」
たしかに急な話で、一足飛びに結婚を決めたため、熟考したかと言われれば違う。
愛のない、跡継ぎのための結婚。
昼ドラならば〝懐妊契約婚〟とでもタイトルがつけられそうな話が自分の身に降りかかってこようとは予想もしていなかった。
だけど、父の喜びようを見れば、きっとこの選択は間違っていないのだと思える。
瑠衣が弁護士を目指さなかった時点で、事務所の後継者をどうすべきかとずっと悩ませてしまっていたのだろうと思うと、優秀な弁護士である大和と結婚して跡継ぎを産むことは、自分の使命かもしれないと感じた。