エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません

瑠衣が大和にはじめて会ったのは中学三年の頃。

如月法律事務所にインターンシップに来ていた大学三年生の大和に対し、英利は目をかけて頻繁に家に連れ帰り、一緒に夕食を食べながら授業の様子を聞いたり、仕事について話したりしていた。

以前から若手の弁護士を家に招き、勉強会のようなものをしていたけれど、一番よく顔を見せるのが大和で、たまに英利の帰宅が遅くなってしまう時は、瑠衣の勉強を見てくれることもあった。

受験生だった瑠衣は、塾の講師よりも教え方の上手い大和に教わるのは助かったけれど、同級生とはまったく違う六つも年上の彼にドキドキしていた。

大和は如月家での食事の後、英利と酒を飲むこともあり、中学生から見た大学生はとても大人で、恋というよりは憧れに近い感情だったように思う。

高校に合格した時にはよく頑張ったと褒めてもらったし、お祝いも用意してくれた。

『今どきの女の子の趣味はわからないけど』

そう言って渡されたのは、本革で作られたキャメル色のパスケース。右下の隅に赤い糸で花の刺繍が施され、シンプルながらひと目で良質なものだとわかる。

『わぁ、ありがとうございます。ずっと大事にします』

その言葉通り、使えば使うほど手に馴染み、愛着も湧いた。

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