エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
大和との結婚生活は、驚くほど順調だった。
ずっと実家で暮らしてきた瑠衣は、大和とのふたり暮らしに多少不安を抱いていたものの、思っていた以上に快適に過ごしている。
料理は元々実家でもしていたので手間取ることもなく、職場に近くなったおかげで通勤も楽になった。
大和の大量の本さえ綺麗に収納してしまえば物が少ない分掃除も楽で、お掃除ロボットがご機嫌で動き回り、洗濯に至っては高層マンションということもあって外に干せないため、洗濯機が乾燥までしてくれる。
大和は整理整頓が苦手とは言っていたが、やたら散らかすわけではなく、仕事が立て込むと読んだ資料を片付けている暇もないというのが実情らしく、瑠衣がその都度片付けてしまえば問題ない。
守秘義務のある職業ゆえ瑠衣が触れてはならないものがあるのではと確認すると、基本的に直接仕事に関わる文書は事務所から持ち出さず、勉強や参考にしようと自発的に集めた資料しかないため、見られて困るものはないらしい。
大和が使っている書斎には大きな本棚があるため収納場所には事欠かない。
彼は申し訳無さそうにしているけれど、瑠衣は積み上がった本や資料の山を片付ける時間が好きだった。
何事も完璧にこなす大和の唯一のウィークポイントが整理整頓が苦手だなんて、年上の男性にふさわしい言葉ではないけれど可愛いと思うし、それを補っているのが自分だと思うと、ちょっとした優越感すら感じる。