エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
今日のシフトは中番で、終業時間は夜の十時。
少し前に仕事を終えた大和から【いつものところで待ってる】とメッセージが入っていたため、更衣室で着替え、軽くメイクを直すと、急いでホテルを出た。
都心に事務所を構えている如月法律事務所には駐車場もあるが、大和は基本電車で通勤している。
駅前で待っていた大和を見つけ駆け寄ると、彼は珍しくひとりではなかった。
「大和さん」
「あぁ、瑠衣。お疲れ様」
「はい、大和さんもお疲れ様です」
いつも通り甘く柔らかい笑顔で迎えられると、立ち仕事で溜まった疲労も吹っ飛ぶ心地がする。
いつ見てもうっとりするほどの大和の微笑みに見惚れていると、「彼女が噂の奥様ですか。早く紹介してくださいよ!」と彼の横に立っている男性が瑠衣に視線を向けたまま肘で大和を小突いた。
「どうしてお前に瑠衣を紹介しないといけないんだ」
「あっ酷い! 僕と先生の仲じゃないですかー」
「どんな仲だ。いいから早く帰れ」
ポンポンとじゃれ合うようなやり取りに親しさが垣間見える。大和を先生と呼んでいることから、きっと事務所の人間なのだろう。
百七十センチほどの身長に細身の体躯、ライトブラウンの短髪の彼は、大和に素っ気なくされてもにこにこと笑顔を崩さない。