エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
瑠衣は珍しく砕けた雰囲気の大和を見られたのが嬉しくて、ついクスクスと笑ってしまった。
「ほらー、先生がいけずだから奥様に笑われてますよ」
「あっすみません、笑ったりして。はじめまして。つ、妻の瑠衣です」
自分を〝妻〟だと言うのがはじめてで緊張してしまったが、彼は気付かずに自己紹介をしてくれる。
「お会いできて光栄です。僕は如月法律事務所でパラリーガルをしてる久保賢汰と言います。クボケンって気軽に呼んでくださいね」
「おい」
久保が瑠衣の手を取り、両手で包んでブンブンと上下に振って握手をするのを、眉間に皺を寄せた大和が咎めた。
「勝手に人の妻に触るな」
瑠衣の肩を抱いて自分に引き寄せる大和の言動に驚いていると、目の前の久保が吹き出すように笑った。
「冷静な高城先生も奥様には独占欲丸出しなんですね! これは明日、早速事務所のみんなに報告しないと」
「余計なことを話さなくていい」
「いやいや話しますよ。だってどんな美人弁護士にも可愛いパラリーガルにも靡かなかった高城先生が、突然所長の娘さんと結婚したなんて聞いたら、そりゃあみんな気になってますから! 先生の結婚を知って、どれだけの女性が嘆いているか」
身振り手振りしながら話す久保の言葉に、瑠衣は小さく反応した。
彼の口ぶりからして、大和は職場でとても人気があるらしい。