エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません

二十六歳の頃に所内の留学制度を利用し、アメリカのカリフォルニア州へ渡った。ロースクールで一年学び、現地の弁護士資格を取得して、さらに一年間働いたのち帰国。

今では三十一歳ながら、国際弁護士として多くの案件を抱える如月法律事務所のパートナー弁護士となった。

それほど優秀なのだから、英利が目をかけているのもわかるし、事務所を継いでほしいというのも頷ける。

如月法律事務所は、日本五大法律事務所と呼ばれる大手事務所に迫るほど大きな規模となり、英利や大和が在籍する東京以外にも、大阪、名古屋、福岡、そして上海、シンガポールにもオフィスを構えている。

生半可な人材には任せられないという考えなのだろう。

だからといって、自分との結婚を持ち出すのはいかがなものだろうか。

父を窘めようと瑠衣が身を乗り出したのを目で制し、英利がゆっくりと話し出した。

「先月、健康診断を受けただろう。その時に引っかかった再検査の結果が昨日事務所に届いたんだ」
「え、待って。なにか病気が……?」

それで急に結婚だ跡継ぎだと言い出したのだろうかと、瑠衣は血の気が引いた。

父は多忙だったが、いつだって家族を大切にしてくれる。

出張などで長期間家を空けることもあるが、子供の頃は予定が合えば運動会にも授業参観にも参加していた。

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