エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません

社長の佐藤は大和よりも五つ年下だが、自社への愛情や誇り、社員への責任感は尊敬に値する魅力的な人物で、何度か面談もしたが人柄もよい好青年だった。

しかし、いくつか不安な面もあるようで、何度も打ち合わせを重ねている。

自社の売却となると慎重になるのは当然なので、大和も時間の許す限り彼の話を聞き、なんとしてもいい条件で締結できるよう手を尽くそうと、日夜奔走している。


いくつか仕事をこなし帰宅すると、玄関の開く音に気付いた瑠衣が玄関まで出迎えに来てくれた。

「おかえりなさい」
「ただいま」

こうして出迎えられるたび、その日一日の疲れが吹き飛ぶほど癒やされると感じる。

ありきたりな新婚家庭のひとコマだが、大和にとっては誰かが自宅で自分を待っていてくれるというのは新鮮で、心に平穏をもたらしてくれるのだ。

「あの、もしかして……ご飯って食べてきましたか?」
「いや、まだだけど。ごめん、そんなに遅かった?」

大和は時計を確認したが、そこまでいつもと変わらない時刻だった。

首をかしげると、瑠衣はどこかホッとしたような柔らかな笑顔を浮かべながら胸に手を当てる。

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