エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません

「いえ、ならいいんです。もうご飯できてますが、先にお風呂にしますか?」

きっと彼女は無意識だろうが、いかにも新妻といったセリフに頬が緩みそうになる。

(ここで『それよりも瑠衣がいい』と言えば、どんな顔を見せてくれるかな)

きっと実年齢よりも幼い顔を真っ赤にして俯いてしまうのだろう。

想像だけで滾りそうになる自身を戒めるために「先に風呂にしようかな」と平静を装って自室へ向かいながら、後をついてくる瑠衣を振り返って尋ねる。

「瑠衣は夕飯は済ませたの?」
「あ、せっかくなら一緒に食べたいなって思って」

えへへ、と照れくさそうに微笑む妻があまりにも可愛くて、大和は片手で顔を覆った。

温かい家庭というものを知らずに育った大和にとって、瑠衣と過ごす時間はなによりもかけがえのない大切なものだ。

物心がつく頃には揃って愛人がおり、冷え切った関係の両親のもとで育った大和とは違い、愛されて育ったであろう邪気のない笑顔がなにより魅力的な瑠衣は、出会った頃から癒やされる存在だった。

それがこうして結婚し、今では愛しくて仕方がない存在になるのは、きっと必然だったのだと思う。

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