余命8ヶ月。
桜音羽目線。

遊園地を出て碧音さんと別れるまで朝陽さんは手を繋いでポケットに入れてくれた。
肌寒くなったこの季節に朝陽さんの手は暖かくてそのおかげかいつの間にか震えは収まっていた。


「あの、朝陽さん·····?」


最寄りの駅に着いたけど朝陽さんはまだ私の隣にいる。朝陽さんの家はどこなんだろ。



「もう帰れるので大丈夫ですよ?今日はありがとうごさいました!」


「·····。」


黙ったまま朝陽さんは私の目の前に立ってもう一度私の手を握った。


「桜音羽っちが話したいこと聞かせて?先輩に話せない分、全部!」


ニカッと笑う朝陽さんに私は惹き付けられるように頷いてしまった。
全部って本当に全部なのかな。


「おすすめのお店あるからタクシーで行っちゃおう!」


そそくさとタクシーを捕まえて乗り込むと手を引いてくれて私もタクシーに乗った。

10分ほど乗った先には若い人が入りやすそうな雰囲気のお店があった。
朝陽さんは扉を開けるとすぐに窓際の席へ座った。いつも来ているというのがよく分かる。


「ここの席お気に入りなんだ。
歩いてる人達が見えて暗くなるとビルの明かりも綺麗でしょ?1人で外出するとよく来るんだよね。·····実はね、メンバーも知らない(笑)」



少し意外に思ってしまった。
朝陽さんのイメージはいつも明るくてどちらかと言うと1人で出歩くのは好きじゃないと思っていたから。
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