余命8ヶ月。
時計を見るともう夜中の0時を回っている。まだ起きてるだろうか。寝てたら出ないだけだよな。自分に言い訳をして通話ボタンを押す。
━━━━プルルルル━━━━
呼出音が鳴っているが繋がりそうにない。これ以上鳴らしても迷惑だと思い切ろうとした時、呼出音が消えて声がした。
『もしもし?どうかしましたか?』
出るなんて思ってなくて声が上手く出なかった。
『碧音さん?』
顔が見えなくてよかった。優しい声に口角が上がる。目の前にいたらきっと抱きしめたくなってしまう。
「今日は何してたの?」
他に聞くことを思いつかず平凡すぎる質問。彼女はバイトだったことを教えてくれた。そして少しの沈黙の後沙也加に会ったことも教えてくれた。
「あいつなんか言ってた?」
『うーん、特には。簡単な挨拶だけでしたよ。それに奏さんのことを本当に好きみたいでした。』
沙也加がそんなことだけ言うだろうか。頭に疑問が残ったが深く追求はしなかった。
「君は今日楽しかった?」
『楽しかったです·····!』
理由を聞くとテレビのネタバレになってしまうからと教えてはくれなかった。それから少し雑談をして気がつくと20分ほど経っていた。口数の少ない俺にすれば十分な長電話だ。
「おやすみ。」
『おやすみなさい。』
スマホをベットの隅に置き俺は眠りについた。覚えては無いけどいい夢を見た気がする。