余命8ヶ月。
芸能界なんて見栄えを気にするやつばかりだ。こいつも例外じゃない。誘われて気まぐれに遊んだ。俺は最低だ。
それに比べあの子はなんて透明なんだろう。純粋で無垢であの可愛い笑顔を俺《黒》なんかが汚しちゃいけない。
分かっているのに歯止めが効かない。
今からでも間に合うだろうか。
透明なあの子に触れられるように少しでも真っ直ぐ生きてみたい。
「俺はもう遊ばない。過去の女に、お前に本気だった事なんて1度もねぇよ。それはお前もだろ?」
「···な····に··よ、何よそれ!私があなたを隣に立たせてあげるって言ってるのよ!?それを断るなんてバカなんじゃないの!?あんな子の何がいいって言うのよ。あんなただ若いだけのやつ·····!」
「あの子の良さがわかんねぇなんてお前残念な生き方してんな。2度とお前と話す気は無い。じゃあな。」
黙り込んだ沙也加を放置して急ぎ足で楽屋へ戻る途中俺はスマホでメッセージを送った。
[会いたい]
既読がつくと電話がなってきた。楽屋に入り耳に当てると困惑している声がした。
『急にどうしたんですか···!?今お仕事中ですよね···?』
自然と口角が上がってしまう。今すぐに会うことは出来ないので仕事終わりに会うことになった。急な誘いに嫌な反応は一切せず『また後で。』優しい声でそう言ってくれた。
電話を切ると俺の周りにメンバーがやってきた。ニヤニヤしてる奴ら。俺は楽屋で連絡したことを少し後悔した。
「さっきまで不機嫌だったヤツがなーにがあるとそんなご機嫌になるんでしょおーねぇ?」
「レギュラー番組の前の大事な大事な特番の撮影なんだから手ぇ抜くなよ!」
「もちろん、今から全力でやるわ。」
カメラの前で自分たちらしく振る舞う撮影は楽しかった。スタッフ達の反応はきっと世間と同じ反応。衝撃を受けている。これもあの子のおかげだ。
初めてカメラの前で心から笑った。