余命8ヶ月。
「覚悟がないのに危ないものは持たない方がいいと思います。いつか取り返しがつかなくなるかもしれませんから。」
声を出すことも出来ず必死に首を縦に振ると沙也加は楽屋を飛び出して行ってしまった。
「捕まえてもらもう。」
「大丈夫です·····!」
周作がスタッフに伝えに行こうとすると彼女は止めた。
「いや、さすがに刃物持ってくるやつは捕まえてもらわないとね?」
太陽がそう言うと周作は楽屋を出た。すぐに沙也加は捕まえられるだろう。
「ごめん····、怖い思いさせて·····」
「初めてです。こんなに譲りたくないものがあるなんて·····!」
知っている優しい表情で俺を見つめてきた。そして彼女の細い手が震えていることに気がついた。怖がらせないようにゆっくり包み込むように抱きしめた。
「本当にごめん。今日は帰ろう。」
短くなった彼女の髪を撫でて俺達は車で送ることにした。心配をしたメンバーも一緒に。
「家に桜樹はいるの?」
「今日は泊まりなんです。明日には帰ってくるんですけど。」
「仕事詰め込みすぎでしょ。それより1人で大丈夫?」
さすがに1人は怖いだろうと思い聞いたが何も答えてはくれない。俺といるのも嫌か。川島といて安心ならそれでもいい。
「川島の連絡先知ってる?」