余命8ヶ月。
この気持ちを素直に伝えよう。
私が感じたことを全て。それくらいしか私にはできないから。



「碧音さん。私は碧音さんに出会えて幸せです。優しくて私の全てを包み込んでくれる。」


「それは君にだけだよ。君に胸を張れる生き方を俺は出来ないんだ。」



自信のなさそうな碧音さん。
どうしたらこの気持ちを伝えれるかな。
ふと私は忘れていたお母さんとの思い出が蘇った。

だから隣いる碧音さんの手にそっと触れた。



「自信を持ってください。碧音さんが父親と思っていたのなら絶対そうです。····あと信じてもらえないかもしれないですけどお母さんが凄く大ファンでビデオとか残してたんです。

たまに私も一緒に見てて····、亡くなる少し前のものだったと思うんですけどお父さん言ってましたよ。『この間、結婚して子供まで生まれる。』『こんな父親で申し訳ないけど俺は世界一幸せ。』

幸せに満ち溢れた顔でそう言っててお母さんはこの時すごく驚いたって言ってました。
小戸森拓也はあまりプライベートを話さなかったみたいですね。だからこそファンはすごく祝福してたって。


小戸森拓也は間違いなく碧音さんのお父さんで産まれてくるのを楽しみにしてたんです。」



「····君が言うなら信じる。教えてくれてありがと。」



きっと葛藤はしただろうけど信じてくれた。
お母さんとの思い出が少しでも碧音さんの救いになれるなら良かった。



「あと迷惑かもしれないですけどメンバーの皆さんには伝えるべきだと思います。
どんなことだってあの人達は受け入れてくれますよ·····!」

「でも奏はもう6年も続けてるしみんな終わり所を探してるんだよね。アイドル人生は短いんだし。」
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