余命8ヶ月。
碧音さんはいつも優しくて人付き合いも上手だと思ってた。だけど違う。心に壁を作って距離感を保ってたんだ。
「駄目です。逃げちゃ、駄目。」
私は碧音さんがこれからどうしたいかわかる気がする。
「本当はもっと一緒にいたいんじゃないですか?」
「だとしてもあいつらは違うでしょ。」
こんなことを言ったら困らせるだろうか。それでも私は碧音さんの隣にあの4人がいて欲しい。
「私のわがままなんですけど奏さんはずっと5人でいて欲しいです。何年も、何十年でも!アイドルの平均活動の期間なんて気にすることないですよ。
もちろん皆さんが嫌なら無理かもしれないですけど私はきっと皆さん同じ気持ちだと思います。」
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碧音目線
“何年でも何十年でも”
優しく俺に溶け込んでいったこの言葉を一生忘れることは出来ないと思った。
こんなに真正面から俺に向き合ってくれている。
俺もあいつらと向き合わないといけない。
「なるべく早く話をするよ。解散になっちゃう前に(笑)」
優しく微笑む彼女が愛おしい。
最後の賭けをするつもりで俺は誘った。
「今度····、年が明けたら旅行に行かない?嫌だったら断ってくれて構わないから。」
なるべく平静を保っていつもの会話のように。年上らしく余裕を持っているように思われたかったから。
「行きたいです····!」
キラキラとした瞳の中に何かが揺らいで見える。けどこの時の俺は微量の違和感も感じられなかった。
「もうひとつ話してもいい?あと一個だけ君に話してないことがある。」
「なんですか?」
微笑んでいる彼女に愛しさを感じながらもあの日のことを伝えた。
「君に会う数日前だったと思うんだけど車に乗っててちょうど信号で止まっててさその時歩道に座り込んでる人が目に入ったんだよね。声をかけたかったんだけどあんな場所で降りたら色々大変だし迷ってたらすぐに立って行っちゃって·····、君と会った時思い出したんだ。この前の子だって。
·····あの時、君はあそこで何をしてたの?」
俺の質問に彼女は首を傾げた。覚えていないようで困らせてしまった。あんなに疲れ果てた顔をしていたのに覚えてないってことは別人だったのか?だけど見間違えの気もしない。