余命8ヶ月。
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あれから先生に部屋を変えてもらって一週間が過ぎた。私は部屋から1歩も出ない生活が続いている。
だけど碧音さんは毎日来てるらしい。ナースステーションで私がどこにいるか聞きに来ている。だけど家族でもなんでもない碧音さんに看護師さんが教えることは絶対にない。
生きる気力を完全に失った私はお兄ちゃんにも冷たい態度をとってしまった。たったの30分でも時間があけば休憩もせずに私に会いに来てくれる。
そんなお兄ちゃんに私は言った。「別に無理しなくていいよ?私は何も変わらないから。」無理に時間を作っては会いに来てくれる唯一の家族に言った最低な言葉。
困惑した様子のお兄ちゃんはそれでも何とか笑顔のまま「俺が桜音羽に会いたかったから。仕事終わったらまたすぐ来るね。」そして暖かい手で頭を撫でて帰っていった。
それから2日後、お見舞いに来てくれた人に私は驚いた。
「久しぶりー。元気?」
「⋯どうしたんですか?」
その人物は朝陽さんだった。告白されたあの日から朝陽さんは来なくなっていたのに。
「あのさ、直球で聞くんだけど先輩に会わなくていいの?」
朝陽さんの瞳は全てを見透かしているようだった。私は心のカーテンを開かないようにぐっと閉じた。
「もう会わないって決めたので。」
「ふーん?でもさぁ頭下げてまで来てくれたんだからちょっと話聞くくらいはしてあげてもいいんじゃない?」
頭を下げた⋯?そういえばどうやって碧音さんはここへやってきたんだろう。お兄ちゃんは碧音さんが来た理由を話さなかった。違う、私が碧音さんを拒否してるからだ。
「まさか李桜の家に遊びに行ってたら来るなんて思ってなかったよ。急に来て、李桜に向かって頭下げてさ『頼む、会わせてくれ』だって。でも李桜は妹にとっていい選択がどっちかわかんなくて固まってた(笑)」