余命8ヶ月。
4
=10年後=
《あ、もう終わりっすか?リスナーの皆さんもう時間が来ちゃったみたいです。スタッフが早く終わらせろって顔で俺を見てる·····じゃあ最後に告知だけさせてもらおうかな?さっさとしろって睨まれました。
えー、明日から開催される小戸森碧音の東京ドーム公演なんですが明日の13時からの公演中に生配信を行うことが決定いたしました。俺のホームページから視聴が可能らしいのでぜひご確認ください。公演の全てを見せることは無理だったんですけど数曲と····ご報告があるので聞いていただけると嬉しいです。
では小戸森碧音のラジオでしたー》
「お疲れ様です。」
「次回は時間通りに進めてくださいよー笑」
スタッフ達と軽く会話をした後、今日は久々に1人で歩いて飲みに行くことにした。
「タクシーもう来ると思うから頑張って····」
信号待ちしてると隣の彼氏が彼女と思わしき子の背中をさすっていた。今は22時すぎ。2人で飲んでて彼女が酔ったか。
「まだかな·····」
彼氏が顔を上げた時、俺と目が合った。まさかこんなところで会うとは。
「あれ、結婚したんじゃなかった?」
「1年前に結婚しましたよ。今日は付き添いです。」
酔っている彼女だと思っていたら体調不良の奥さんってことか。こんなところに病院なんかあったか?
「····いつも李桜がお世話になってます。」
明らかに顔色の悪い状態だった。桜音羽のいた頃と違って顔がキツく見える。タクシーももう来ると言っていたしさっさと立ち去ろう。
「じゃあまた、」
「せっかくだから積もる話もあるでしょう?私は大丈夫だから行ってきて。」
「いやさすがに「いいから。家で待ってる。」
桜樹の奥さんはやっと来たタクシーに乗ってそのまま帰ってしまった。けどあの雰囲気だと優しさで飲みに行っていいってわけじゃなさそうだな。